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他の入居者からの苦情が絶えない借主

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何人かにアパートの部屋を貸しているのですが、ある入居者が共用通路に木材や植木鉢などを置き、他の入居者の通行を妨害しています。
それ以外にも、騒音を立てたり怒鳴ったりして、他の入居者からの苦情が絶えません。
繰り返し注意をしても、まったく態度を変えないのです。
家賃の不払いなどはないのですが、契約を解除できないでしょうか。

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貸主による契約解除が認められる可能性は高いでしょう。

「近隣への迷惑禁止」を定めた特約を設けておく

マンションやアパートを賃貸していれば、なかには常にトラブルの原因となる借主がいることもあるでしょう。

貸主はすべての借主に対して、その契約目的に従って建物を使用収益させる義務を負っています。

ですから、ひとりの借主が我慢の限界を超える騒音を出し続けたり、目に余る身勝手な行動をとって周囲に迷惑をかけるようであれば、他の借主が安心して生活(営業)できるように、適切に対処しなければいけません。

このような場合に対処するために、賃貸借契約書には、あらかじめ禁止事項として「近隣及び居住者に迷惑を及ぼしてはならない」という一文を盛り込み、これに違反した場合には契約を解除できるという特約を設けることが多いようです。

この特約は法律的にも有効とされています。

借主がアパートの通路に木材などを置いて他の居住者の通行を妨害したり、他の居住者に嫌がらせを繰り返した事例について、「庭や物置などを近隣に迷惑をかけないように使用する」という特約に違反したとして、裁判所は契約の解除を認めました(東京地裁/昭和51年5月27日判決)。

また、アパートの廊下に汚物を放置したり、ラジオを高音で鳴らし続けたりしたため、他の居住者が不眠、ノイローゼになって全員が退去した事案において、「近隣への迷惑禁止行為」の特約違反で、問題の借主の契約解除を認めた例もあります(東京地裁/昭和54年11月27日判決)。

迷惑の程度がひどければ特約なしでも解除される

もし、迷惑行為禁止特約がなくても、借主の常軌を逸した行為が信頼関係を破壊していると認められれば、契約を解除することは可能です。

裁判所は、ある借主が近隣の居住者に対して騒音を立てたり、怒鳴ったり、下着で廊下を歩いたり、廊下に大きな私物を置いて他の住人の通行を妨害したりした事案において、「迷惑行為禁止」の特約がなくとも、信頼関係が破壊されたとして契約解除を認めています(東京高裁/昭和61年10月28日判決)。

本事例では、信頼関係が十分破壊されているといえますから、特約がなくても解除が認められる可能性は高いでしょう。