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借主が無断で2ヶ月も不在となっている場合

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私はマンションの一室を貸していますが、借主が無断で2ヶ月も不在となっています。
賃貸借契約書では、「借主が1ヶ月以上無断で不在の場合は契約を解除できる」と特約で定められているので、この特約によって解除したいのですが、認められるでしょうか。

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借主が貸主に無断で不在にしていたという理由だけでは契約解除は認められないでしょう。
ただし、借主の不在が、建物や貸主、他の借主に対して具体的な不利益をもたらし、それにより貸主と借主の信頼関係が破壊されたといえる場合には、契約解除は可能でしょう。

無断で不在にしていただけでは契約解除できない

賃貸借契約書に「長期の不在を理由に契約を解除できる」という特約がある場合、契約解除が認められるでしょうか。

賃貸借契約は当事者間の信頼関係のもとに成り立っています。契約解除が認められるかどうかは、信頼関係が破壊されているかどうかによるので、いくら特約があるからとはいえ、解除が認められて当然だと考えるのは難しいでしょう。

では、借主が無断で不在の場合は、どのような事情があれば信頼関係が破壊されているといえるでしょうか。

判例では、貸主が65歳を過ぎたひとり暮らしの女性で、築35年以上の木造2階建ての共同住宅を貸していたところ、借主が無断で長期間(1年のうち3ヶ月)留守にすることが多かった事案において、信頼関係が破壊されたことを認めています(東京地裁/平成6年3月16日判決)。このケースでは、契約書に「借主が1ヶ月以上無断で不在の場合は契約を解除できる」という特約がありました。 

この事例では、建物の性質上、普段から通風や日照などに配慮しなければならないのに、借主が雨戸を閉め切ったまま長期間留守にしたため、湿気が充満し、部屋を損傷させてしまいました。

また、不在中にガス漏れが起きたり、合カギをずさんな状態で管理するなど、借主側に協調性が余りに欠けていたとして、信頼関係は修復が不可能なほど破壊されていると判断しました。

借主側は長期の無断不在は正当だと主張していましたが、この事例に関しては単に不在が続いていただけでなく、建物の性質上必要な協力を借主側が怠っていたということが考慮に入れられています。

結局、借主が無断で不在にしていたことを理由に契約を解除したい場合は、その不在が、建物や貸主、そして他の借主に対してどのような不利益をもたらしたかを検討し、信頼関係が破壊されたといえるかどうかを検討することになります。これらが破壊されたといえれば、契約解除は可能でしょう。

長期の不在なら入室してもよいか

信頼関係の破壊が認められなくても、借主が長期不在のまま家賃が何ヶ月も滞納され、その不払いによって信頼関係が破壊されているといえれば、契約解除は可能です。

ただし、いくら借主が無断で部屋を空けているとはいえ、勝手に部屋に立ち入り、そこに置かれているものを撤去したりすることは許されません。

こうしたトラブルが起きた場合、貸主は裁判所を通じた手続にしたがって、処理をすることになります。この手続を踏まずに自力で解決(法的には「自力救済」といいます)することは禁止されていますから、勝手に部屋に入ることは違法になるのです。