電話をかけるご相談フォーム

無断で借主に部屋の壁紙を張り替えられたら

q.jpg
q_smp.jpg

借主が、貸主の許可なく、部屋の壁紙を全面的に張り替えて貸室の模様替えをした場合、貸主は、直ちに賃貸借契約を解除できますか。

a.jpg
a_smp.jpg

貸主の許可なく壁紙を貼り替えただけでは、貸主の契約解除は認められないと判断されることが多いでしょう。

重要なのは貸主と借主との信頼関係

通常、賃貸借契約書には、借主は、貸主の承諾なく借家の増築、改築、改装、模様替えをしてはならないと記載されています。

とはいっても、部屋のカーテンを取り替えたり、家具の配置を変えるといった模様替えであれば、部屋の本体に手を加えずになされる模様替えなので、借主は自由にできます。

このような簡単な模様替えであれば、たとえ賃貸借契約書に「承諾のない模様替えが禁止」という規定があっても、貸主は借主に対して契約違反を主張することはできません。

問題となるのは、質問のケースのように、壁紙を全面的に変える、あるいは部屋の壁を塗り替えるといった、部屋の本体に手を加えてなされる模様替えです。

賃貸借契約書では、通常、契約に違反する行為を借主がとった場合には、貸主は、直ちに賃貸借契約を解除できると規定されています。

しかし、この規定があるから簡単に解除できるとなると、契約違反行為の程度がささいなものであっても契約が解除できることになり、借主にとってあまりに酷な結果となってしまいます。

賃貸借契約は、ある一定の期間、継続することが前提となっている契約で、貸主と借主間の信頼関係が基礎となっている契約です。

そこで判例は、借主が契約違反行為を行った場合でも、契約解除を直ちに有効なものとせず、貸主と借主との間の信頼関係が破壊されたといえる場合に、初めて契約解除を有効とするとしています。

ですから、借主が賃貸借契約に違反する行為を行った場合でも、貸主と借主との信頼関係が破壊されたとはいえなければ、貸主の契約解除は有効とはなりません。

壁紙の変更で契約解除は認められない

さて、質問のケースについては、どう考えればいいでしょうか。

壁の模様や色は、個人の趣味嗜好が強く表れるところですが、そもそも個人の趣味嗜好も時間の経過によって変わっていくものです。

従って、壁紙を替えたからといって、ただちに貸主と借主の信頼関係が破壊されるとまではいえないと考えるのが普通でしょう。それゆえ、貸主の契約解除は認められないと判断されることが多いと思われます。

もっとも、借主には、賃貸借契約が終了した際、貸室を元通りの状態にして返還する義務(原状回復義務)があります。そこで、借主が貸主の承諾を得ないで壁紙を張り替えた場合、貸主は、元の壁紙に再度張り替えるよう要求したり、あるいは再度の張り替え費用を請求することはできるでしょう。