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賃貸借の更新と保証人の責任

(最高裁平成9年11月13日判決)

事案の概要

貸主は、昭和60年6月1日から2年間、賃料月額26万円で、マンションを賃貸した。本件賃貸借契約の借主には連帯保証人がついていた。

その後、賃貸借契約は3回にわたって更新されたが、更新の際、作成された賃貸借契約書には連帯保証人の署名・捺印はなく、保証意思の確認の問い合わせもなされなかった。

借主は、2回目の更新後の契約期間中から賃料を滞納し、滞納状態のまま3回目の更新がなされた。

貸主は、2回目の更新後の契約期間中の賃料合計75万円と3回目の更新後の契約期間中の賃料等合計759万円を支払うよう借主が支払わなかったため、連帯保証人にこれを支払うよう求めた。

これに対し、連帯保証人は、保証契約の効力は合意更新後の未払賃料債務には及ばない、仮に及ぶとしても貸主の請求は信義則に反するとして支払いを拒否した。

結論

保証人は、貸主において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる借主の債務についても保証の責めを免れない(本件では、貸主の請求は信義則に反しない)。

理由

建物の賃貸借は、相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係であり、賃借人が望む限り、更新により賃貸借関係を継続するのが通常であって、保証人となろうとする者にとっても、上記のような賃貸借関係の継続は当然予測できるところである。

また、保証の主たる債務が定期的かつ金額の確定した賃料債務を中心とするものであって、保証人の予期しないような保証責任が一挙に発生することはないのが一般であることなどからすれば、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で保証契約をしたものと解するのが相当である。

もとより、賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得ることはいうまでもない。

以上によれば、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである。

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